Story No.24
チャイルド・リサーチ・ネット 所長   株式会社グースカンパニー 代表取締役

小林 登さん

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千葉宏一

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チャイルド・リサーチ・ネット・小林登氏

-Profile

東京大学名誉教授
国立小児病院名誉院長
甲南女子大学国際子ども学研究センター名誉所長
子どもの虹情報研修センター
(日本虐待・思春期問題情報研修センター)前センター長
中山科学振興財団理事長

日本子ども学会理事長
日本赤ちゃん学会名誉理事長
日本母乳哺育学会名誉理事長
日本子ども虐待防止学会理事・名誉会長
国際小児科学会元会長

小児科医として長年にわたり、育児・保育・教育などの問題を
総合的にとらえた「子ども学」を提唱

現在、チャイルド・リサーチ・ネット所長

 

「育つ力と育てる力」

2010年8月
【チャイルドケアリング・デザインとは】

色々なニュースが飛び交う世の中。
楽しいこともあれば、悲しいニュースもあります。

変わり続ける世の中ですが、子どもにとって育ちやすい環境を作っていきたい。
その思いはだれもが持っているはずです。

そんな思いを親の立場、そして保育者や、教育者の立場から子育てに関する話題、論文を掲載しているサイト
CHILD RESEARCH NET 【チャイルド・リサーチ・ネット】の所長・小林登氏にお話しを伺ってまいりました。

小林さんは小児科医を定年で退職後も様々な活動を続け、子どものため世のためにを常に考え
研究を続けています。







(千葉) チャイルド・リサーチ・ネットを始めたきっかけは、どのような事だったのですか?


(小林) 小児科医を定年の前に、1992年にノルウェーに招かれたのです。
   子どもの問題に関する国際会議で、子どもの問題を広く考えるためノルウェーの国立子ども学研究センターを中心に
   医学者だけでなく、心理学者、社会学者など、世界の研究者をインターネットでつなごうということになり
   育児・保育・教育のインターネット上の子ども学研究所Child Research Net(CRN)をつくったわけです。
   1996年に日本語版と英語版。 そして2005年に中国語版ができました。

   主な活動の内容は親や保育士、教師や研究者の立場から、育児、保育、教育に関する話題を掲載し、
   世界の子どもを取り巻く諸問題を解決するための、学際的な研究に取り組んでいます。


(千葉) 確かに今の世の中、子どもを取り巻く環境はめまぐるしく変化していますよね。
   今4歳になる孫がいるんです。
   次男の子どもが産まれたとき、息子夫婦は溺愛していて。
   それをみて、自分が子どもを育てた時はどうだったんだろう?と改めて考えるきっかけになりました。
   
   なんとなく父親の育児の関わり方が、変わってきている気がしたんです。
   育児に積極的に参加する父親が増えていると思うのですが、
   僕はどちらかと言うと、ご飯上げたりおむつ替えたり、というよりも
   父親としてのありかたは、そういう事だけじゃないと思うのです。
  
   いろんな意味で、子どもに対する接し方が変わっているんだと思います。
   「育つ力、育てる力」と仰ってましたが、育てる側の環境が変わってきているんだと思います。
   そういう中で残念なニュース(虐待)がすごく増えていますよね。


(小林) これは先進国の悩みなのです。 社会が豊かになった証拠だと思います。
   人間がなぜ優しい心、怒り、喜びなどの感情を持ったか。
   それは生きていくためなんです。
   人間は動物のように自分を守る牙や爪がない。
   だからチームを組んで、協力しあって生きていかなければいけないんです。
   チームを組む、それはつまり家族や社会の基盤として、人間関係を結ぶ情動、
   すなわち優しい心のプログラムを持ったんだと思います。

   その後、進化が進み知性や理性の心のプログラムを持った。
   ところが今は、人間は協力しあっていかなくても生きていける、
   社会が豊かになったおかげで、人間関係をつなぐ優しい心を使わなくても生きていけるようになってしまった。
  

 先進国の共通の悩み ~虐待~


(小林) その証拠に、虐待が初めて起こったのはアメリカなんです。
   第二次世界大戦後、戦争に勝ち豊かになった国から始まっています。
   日本も1970年代に入り、豊かになった頃から虐待が医療の場で見られるようになったのです。
   豊かさの影の問題、それはいろんな社会問題の根本的な原因なのかもしれません。

   人間関係が希薄になってしまった。
   そういう風にとらえ、新たな人間関係を強める方法を考えなければいけない。
   そういうことから子ども学会、チャイルド・リサーチ・ネットを作ったんです。



(千葉) 豊かさのおかげで虐待が増える。なんとも皮肉な現実ですね。
   中国の育児って今はどうなのですか?
   同じように虐待など、増えているのでしょうか?


(小林) 増えているんだと思いますが、まだあまり表に出てきていないですね。
   子どもを育てる3つの営みは 「育児、保育、教育」。
   中国の保育は、ものすごく長い歴史があるんです。
   日中戦争の時から女性が戦争に参加していましたから、大変な時代でした。
   子どものために、寄宿制の保育があったりします。そういう意味で中国の保育は非常に発達している。
   参考になります。
   
   

チャイルド・リサーチ・ネット・小林登氏 グースカンパニー代表・千葉宏一




(千葉) インターネットという誰もが参加できるメディアで、何かできないかと考えています。
   育児に携わっている人たちが、集まり話せるような場を作りたいんですよね。
   同じ状況に置かれている人達が集まれば、大変な事を分かち合い、逆に楽しいことを共有していける。
   育児って大変な事もたくさんありますが、それを超える楽しさがあるはずだと思います。
   
   赤ちゃんがすくすく育つ最大の理由って、周りが笑顔を絶やさないことが大事なんだと思うんですよ。


(小林) 子どもは生きる喜びがいっぱいになるべきなのですよ。
   ニコニコ笑って、お腹がすいたら泣いて、ママとパパに甘えて。
   生きる喜びいっぱいの状態を作ることを、 チャイルドケアリング・デザイン と呼んでいます。

   子どものことを考え、子どもに優しいデザインをする。
   BabyGooseの洋服でもそうですね。子どものことを考えて作る。
   子ども手当もそうですね。
   現金として配るよりも、チャイルドケアリング・デザインをよく考えて実行するべきだったと思います。

   この機会に、全てをチャイルドケアリング・デザインをした社会を作るべきだと思いますね。
   たとえば勉強方法も。
   今は小学生からインターネットを使い、宿題の答えを調べてしまうようになりつつあります。
   話し合い、考えることが勉強の過程で大事な事です。
   これは大人と同じですね。
   子ども、教育に関心があるいろいろな学問の研究者、また実践者を集めて、一緒に考える。
   そのためには、どんな専門の人でも気軽に集まれるように「子ども学」と名付けたんです。 
   児童学だと堅苦しいでしょ。

   同じように外国にもモデルがあります。
   北欧では子ども研究 Child Research。 ロンドンではChild studies 。
   

(千葉) 少子化っていうのはどこの国も問題になってるんでしょうね。
    少子化を解決するには子どもだけでなく、
   育児休暇など、子どもを育てる環境をしっかり作っていけるようにするべきなんですよね。
   こども手当だってやっぱり貯金しちゃいますよね。
   
(小林) そうですね。現金として配るのであれば、その配り方。
   これもチャイルドケアリング・デザインを考慮するべきだったんでしょうね。
   この様な考え方は北欧がとても進んでいます。 特にノルウェー。
   石油が見つかったからですが、豊かなんですよね。
   子どもの権利条約が89年にできましたからね。
   そこから、子どものことをみんなで考える運動がはじまりました。


(千葉) そういえば最近、友人の子どもがデンマークに留学したんですが、
   学費の免除だったりとすごく教育に安心感があるそうですね。





 人間の脳



   (小林) 人間の脳の進化の歴史はとても面白いんです。
   脳という組織の一番古い形は、魚や爬虫類の先祖と言われています。
   この脳は心臓や呼吸の動き、餌を食べる運動などの生命を維持するためだけの脳だった。
   そして、原始的哺乳類になってくると、本能の子孫を残す事や、食欲を満たす。
   そういった生きていくためにチーム(群れ)を組むのに必要な優しさと共に、怒りとか攻撃とかの情動力が備わる。
   
   そういう風に身体の働きを強め、高等哺乳動物(犬や馬)になると知性や理性ができ
   他の動物、仲間、そして環境なども考えて、生きていくようになってきます。
   そして猿から人間へと進化し、文化文明を創る脳をもったと考えられています。

   3万年前の人類でも死者を弔い、お花をまいたりしていたという事実が残っています。
   そういう優しさの心というのは、人間が生きていく上で一番重要なんだと思います。
   今の社会は優しさの心、チームを作って生きていくことの必要性が無くなってしまうほど、豊かな社会になってしまった。
   それがいろんな事の原因だと思います。


(千葉) 確かに、隣の人が何をしているか気にしなくなっている。
   そういう意味では心が退化しているんですね。


(小林) 胎児の時に人間は原型ができています。
   お腹の中の赤ちゃんは手を動かし、あくびをしたり、ほとんど大人のすることが既にできるんですね。
   そういう心と体のプログラムをもって生まれてくるんです。

   赤ちゃんが大人の体に成長していくということは、生れた時点で備わっている心と体のプログラムを使いながら、
   それを組み合わせて理性や知性を身につけていく。
   人間が社会で生きていけるように、組合せた複雑な心のプログラムを使いながら生きていく。
   でも、どんなプログラムも使わないと発達しないのですね。
   優しさを体験しないと、優しさがわからない。 そういう意味では退化している人が多いと言えるのでしょうね。


(千葉) ケンカや痛みも同じですよね。
   痛いことを経験しないと人の痛みが分からないですものね。


(小林) ケンカは優しさの逆のプログラム。
   ケンカをしてみて、生きて行く意欲の心を育てると共に、もうしないということも学んでいかないといけない。


(千葉) そういうプログラムをもって生まれてくる。
   初めて考えてみましたが、とてもわかりやすいですね。
   僕もたくさんの方と対談をしていき、今後の世の中が少しでも楽しく子育てができる社会になるようにしていきたいです。


(小林) ぜひ頑張ってください!


(千葉) 本当に勉強になりました。
   今日はありがとうございます!


チャイルド・リサーチ・ネット・小林登氏とグースカンパニー代表・千葉宏一


小林さんが所長を務めるチャイルド・リサーチ・ネット(CRN)

たくさんの方に見ていただくために
サイトをリニューアルしたばかりです。
(2010年09月15日現在)


こちらの英語版中国語版もあります。
チャイルド・リサーチ・ネット


今回対談を行った場所は神保町にある学士会館。

初めの設立は明治10年(1877年)
現在の建物は昭和3年(1928)に竣工し、
学士会事務局以外に会議室、結婚披露宴会場、ホテル、レストランとしても利用されています。

歴史ある建物と重厚感のあるインテリア。
そして誰もが使える談話室はとても落ち着いて話ができるスペースでした。

そして学士会館と言えば、野球発祥の地でもあります。
神保町駅A9出口側に、野球のボールを握った手の記念碑があります。

詳しくはこちらから >>>学士会館ホームページ


小林登氏と千葉宏一

チャイルドケアリング・デザイン

子どもを育てやすい環境をつくるための
デザイン

今後の世の中に必要なのはこういった
取り組みなんだと思います。


そして少子化、育児、虐待
子どもに関する問題は日本だけでなく
世界共通する問題。

そのことを改めて再確認しました。

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